サラ金、消費者金融から過払い金を取り返す
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  • 過払い金返還訴訟におけるサラ金業者の反論1−遅延損害金金利の適用

    過払い金返還訴訟において被告であるサラ金業者は、返済の遅れがあると遅延損害金金利での計算を主張してきます。

    取引の途中で返済に遅れがある場合に、遅れた日数分について遅延損 害金金利で計算するか否かが問題となります。しかし、返済の遅れ があっても、一貫して通常利率で計算します。遅延損害金金利(遅延利息)の適用はありません。通常はこの点で争われることは ほとんどありません。争う業者はシティズなど数社と思われます。

    私の場合は、プロミスが裁判において答弁書で遅延損害金金利の適用を主張してきました。しかし、私が準備書面で下記を参考に反論すると、主張を取り下げ和解の申し入れをしてきました。

    過払金返還請求の実務 井上元弁護士

    契約書では一回でも返済が遅れたら期限の利益を喪失するという 条項が入っています。そこで、過払金返還請求をしても、貸金業者 は、例えば一回目の返済期日に一日でも遅れていれば、それで期限 の利益を喪失したから以降はすべて一・四六倍の遅延損害金の率で 計算すると主張する判例が多く現れています。しかし、貸金業者は 返済が一日や二日遅れても、それで期限の利益が喪失したというこ とで一括返済を求めることは通常ありません。一括返済させるより も取引を続けて高利の利息を受け取り続けるほうがよほど儲かるか らです。業者によっては、その後も遅延損害金ではなくて利息とし ての領収証を発行していることもあります。 この点は、東京高判平成一三年一月二五日(判時一七五六号八五 頁、判タ一O八五号二二八頁)は、貸金業者は借主に対し期限の利 益喪失を宥恕したという理屈で、遅延損害金ではなく利息の利率で 引き直し計算することを認めています。このような判決は他に何十 件も積み上げられています。

    過払金返還請求をめぐる実務上の諸問題 河野聡弁護士

    1 シティズの主張

     過払い金返還請求訴訟において、最近の重要な論点の一つに、シティズが主 張している、一日でも遅延した場合は期限の利益を喪失し、その後は一貫して 遅延損害金金利で計算すべきだとする主張の是非の問題があります。

     シティズについては、前述した最判平成一八年一月一三日、一月一九日判決 によって、もはや貸金業規制法四三条一項の主張は認められようがなくなった のですが、シティズは、少しでも過払い金返還額を少なくしようと考え、一日 でも遅延した場合には期限の利益を喪失し、その後は受取証書も損害金と記載 して発行しているので、利息制限法に引き直し計算をする場合にも、遅延損害 金金利で計算すべきだと主張します。利息制限法における遅延損害金金利は、 二〇〇〇年までは、三〇パーセントという高利でしたから、古い契約の場合は、 特に大きな差が出ます。こちからが過払い金返還請求訴訟を起こしても、シテ ィズの側から残額があるとして反訴まで起こされますから、熾烈なたたかいと なっています。

     私が今扱っている一番際だったケースでは、真面目な人で、途中で全く遅れ ていないのですが、一回だけ、支払日の午後三時二分に銀行振り込みをしたた め、翌日扱いとなったというケースがあります。その人はちゃんとシティズに 電話して、「今、振り込んだけれど、翌日扱いになるそうです。」と言ったと ころ、シティズの社員は、「はい、分かりました。」と対応したけれど、その 後の領収書は損害金として発行していました。しかし、本人は遅れたという意 識がないので、その後も償還表どおり毎回振り込み、シティズも何も言いませ んでした。それで、最後の返済の後に、シティズが、「あと何千何百円足りま せん。入れてください。」と言い、本人は、「そんなことないだろう。」と言 ったけれど、面倒臭いから入金して完済になっているという事案です。シティ ズは、ここで一日遅れているから、その後は二一・九パーセントになるのだと 主張しています。しかし、このような事例で、シティズが、期限の利益を喪失 を理由に一括請求をしたわけでもないのに、その後遅延損害金金利を請求する ことができるというのは、全くおかしなことです。

     従来の典型的な理論からすると、貸金業者が遅滞を宥恕したという考え方が あります。また、黙示の合意によって期限の利益が再度付与された、あるいは 期限の利益が復活したという考え方があります。しかし、シティズの場合は、 延滞後の受取証書に一貫して損害金と明記していますから、遅滞わ宥恕したり、 期限の利益を再度付与したことはないと主張します。このような形式論を認め る判決も次々と出されています。

     しかし、少しずつではありますが、シティズのこのような形式論を排斥し、 途中で遅延があっても、一貫して利息制限法上の通常利率で計算するべきだと する判決が出ています。このような判例の拮抗の中で、この論点について、再 び最高裁判決が出されることになるのではないかと思います。

    2 シティズの期限の利益喪失論に対する対抗理論

    (1) シティズの期限の利益喪失論に対する対抗理論としては、そもそも 貸金契約のような継続的な契約関係においては、賃貸借契約等と同様に、数日 程度遅延したとしても、信頼関係を破壊している場合でなければ、当然には期 限の利益喪失は認められないと考えるべきであるとする考え方があります。

    (2) また、利息制限法超過利息を支払っていくと、利息制限法の 計算では、毎回の返済で過払い金が発生していることになるので、その分をプ ールして行けば、ある回に約定返済を遅れたとしても、利息制限法に基づく計 算では遅れていないことになっていると考えられます。「ボトルキープ論」な どとも呼ばれています。もっとも、この考え方は、一回目から遅れたような場 合には、使えない理論ではあります。

    (3) さらに、そもそも高利貸金業者は、利息制限法を超過した違法な金 利で貸付をしているから、顧客は返済金準備に困難を来たして支払を遅れるの であり、それにもかかわらず、業者が数日の遅延を理由に期限の利益喪失を主 張することは、信義則に反し、権利の濫用に該当するということができます。

    (4) シティズの受取証書の記載に関する形式的な主張に対しても、シテ ィズは、現実には一括請求をしていないし、受取金も利益として処理をし、決 算上も損金処理をしていないし、延滞情報の届け出もしていないのですから、 形式的な面を見ても、必ずしも遅延損害金金利の取得が正当化されるとは言え ないのです。

    過払金返還請求の現状と残された問題点 瀧康暢弁護士
    期限の利益喪失特約と遅延損害金

    1 問題の所在

    みなし弁済の認められる余地が皆無となった現在、貸金業者の最 大の関心事が、期限の利益喪失に伴う遅延損害金の問題です。貸金 業者の最後の「生命線」といえるかもしれません。

    利息制限法では二○〜一五パーセントでしか貸せないがもし、返 済が遅滞すれば、極端な解釈をとれば返済期日に一日でも遅れれ ば、その後は一貫して合法的に法定金利の一・四六倍の金利、一O ○万円未満であれば二六・二八パーセント、一○O万円以上であれ ば二一・九パーセントの金利を徴収できるからです。これは、実際 上約定利息とほとんど同じ利息となります。

    一○年間取引があれば、返済回数だけでも一二O回、多重債務者 であれば普通、一日二日の遅れは通常あります。一日か二日遅れた 時点で、それ以降借増し・借換えがない限り、この二六.二八パー セントで利息を取るということになったら、実際上過払いとなる可 能性はなくなってしまいます。貸金業者の中では、シティズが真剣 になって争っています。

    2 論点の整理

    (1) 期限の利益を喪失していないことを理由とするもの

    a 利息制限法で引き直し計算してすでに履行(返済)すみである
    仮に返済期日に元本と約定利息の支払いを怠った場合でも、利息 制限法で引き直し計算した結果、法定金利で支払うべき元利金が支 払われている場合は、債務者はなすべき支払い義務を先行して履行 しているのであるから、履行の遅滞に陥っておらず期限の利益を喪 失していないとする考え方です(神戸地判平成十七年八月二五日、 横浜地判平成一七年一O月十三日)。貸金業者との取引が、一年以 上続き、その後、数日返済に遅れたような場合には有効な反論とな ります。

    b 信義則上、期限の利益喪失の主張は制限される
    前述aの理由の場合、例えば、借入れをして初回支払日に一日遅 れた場合、救済の余地はありません。

    しかし、実質的に考えて、返済期日に数日遅れても、一括弁済を 求めず、翌月は異議を述べることなくいつも通りの分割金を受領 し、延々と何も変わらず弁済金を分割して受領しておきながら、過 払金返還請求を受けたと同時に、さかのぼって期限の利益の喪失と 遅延損害金の発生をいうことは、おかしいと感じるところです。 この場合、継続的契約関係において、期限の利益を喪失させる、 損害賠償義務を負担させる、あるいは契約関係を一方的に終了させ る場合は、単に形式的に債務の遅滞、不履行があっただけでは足り ず、契約当事者間の信頼関係の破壊と催告が要件となるという反論 が可能です。借地借家契約の解除における正当理由の要件、信頼関 係破壊の理論と同じです。

    基本契約書に定型的に「元利金の支払いを怠った場合に当然の期 限の利益を喪失する」、一回でも遅滞したら期限の利益を喪失す る」との記載された条項があっても、これを制限的に解釈すること になります。例えば、何か月間、何回にもわたって支払いを遅滞 し、催告をしても返済の遅れが是正されなかったなど、当事者間の 信頼関係が破壊されたと認められる場合に限り、期限の利益を喪失 する旨を定めた条項であると解釈するべきだということです。 この理論を正面から認めた判決は今のところ見当たりませんが、 東京高裁平成一二年六月二七日(判例集未掲載)がこれに近いこと を述べています。

    (2) 期限の利益を喪失を認めながら、遅滞の効果を認めないもの

    実務上、三、四日以内の遅れがあっても督促もせず、一括弁済を 求めず、そのまま分割返済を受けていれば、遅滞の効果は免除し た、期限利益の喪失を宥恕した、あるいはそのまま分割金を受け取 っていることに着目して、期限の利益を再度付与したという判決が ほぼ主流だと思います(判例については、前掲Q&A(第二版)七 八頁参照)。

    しかし、一日二日の遅れただけで、期限の利益の喪失を認める裁 判官もいます。油断はできません。

    なお期限の利益喪失特約と損害金の問題に関しては、全国クレジ ット・サラ金問題対策協議会編著『クレサラ実務最先端二○○六年 版 進展する過払い金返還請求とクレジット過剰与信の問題を中心 に』に戸田慶吾弁護士が書かれた「貸金業規制法四三条に関する一 連の最高裁判決の評価と射程ー特に期限の利益喪失の問題につい て」二μ頁以降)において、優れた論点整理と判例紹介がなされ ています。

    3 利息制限法四条違憲論

    遡って考えて、この期限の利益喪失に伴い損害金が発生する理由 は何なのだろうということです。返済が遅れる場合、たいていは借 金で首が回らなくなっている。分割返済さえできない。その状況を 無視して、遅滞が生じた時点で一括弁済を求めることができ、さら にペナルティとして遅延損害金の請求ができる。この利息制限法の 四条一項の規定白身が果たして妥当なのか、合憲なのかという問題 意識に行き着くわけです。

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