破産手続き開始決定後、免責許可決定後の過払金返還請求の可否
(1)問題の背景―サラ金が借り手を破産に追い込んだことにある
破産手続き開始決定後の、あるいは免責許可決定後の過払金の請求が可能か
どうかという問題です。
破産決定をもらって借金をゼロにしておきながら、過払金の請求
ができるかどうか、またするべきかどうか。
望ましいやり方は、破産手続き開始決定後、免責許可決定を受けるまでに、
過払金は全部換価回収して、債権者に按分して配当するということ
でしょう。
ところが、かつては(2004年ころより前までは)裁判所も過
払金債権の存在を見過ごして(ある側面では破産手続を速やかに進
行させるため見て見ぬふりをして)、免責許可決定を下すことが多々あ
りました。裁判所が、破産申立後は過払金の存在に目をつむってい
るという取扱いに乗じ、サラ金は、自らの過払金の支払いを免れる
ため、顧客を破産に追い込んでいたのです。
すなわち、過払金が発生している顧客に対しては、取引履歴を全
部開示せず、過払金の回収を渋滞させ、いつまでも破産申立てでき
ない状態にして債務者を不安に陥れ、それどころか代理人弁護士事
務所に進捗状況をうるさく問い合わせ、しびれをきらせて破産申立
てする方向に追い込んでいたのです。二年前ころは、破産申立てし
ても裁判所が現在のように「過払金を回収して配当せよ」などとい
う指導をすることはほとんどありませんでした。また債務者本人も
免責許可決定を得て借金がゼロになれぱそれで満足し、過払金の回収ま
で高望みしませんでした。そうした状況にサラ金は悪のりして、債
務者を破産に追い込み過払金の支払いを免れていたわけです。
ここに「免責許可決定後の過払金の請求ができるか」という問題の所
在があります
(2)かつて免責許可決定を受けた事件についても過払金を回収すること
が正義
最高裁シティズ判決が出た今は、前述したとおり破産申立てをす
れば、裁判所が過払金の回収を指導するので、破産申立てされてし
まうと、逆に過払金の支払いを免れなくなりました。ですから、サ
ラ金が「顧客を破産に追い込んで過払金返還から逃げる」などとい
うあこぎなことができない良い時代になりました。
では、過去の良くない時代の「過払金の回収を断念して、破産廃
止・免責許可決定に至っている事件」をどうするか。正義の実現のため
には、このままサラ金に過払金を温存して、放置するわけにはいき
ません。
経済ジャーナリストや大学研究者の一部には、過払金債権を隠し
て破産の申立てをして、免責許可決定が確定した後に過払金を回収する
のは権利の濫用だと主張している人がいます。しかし、過払金債権
を隠して破産申立てし、その後免責許可決定を得たのちに過払金を請求
するような計画的な事案は実際には考えられません。経済的に困窮
している債務者は、過払金債権があれば、まず回収して当面の生活
費や破産申立費用に使います。
免責許可決定後、過払金の請求ができるかという問題は、かつてサラ
金が過払金返還を免れるために借り手を破産に追い込んでいたこと
にこそ原因があるのです。
私たちも、自戒の念を込めて過去の白分の事件を洗い直してみ
て、過払金を回収せずに、事件を終了させている破産事件があれ
ば、今からでも遅くはありません。消滅時効完成前に再調査回収す
べきです。
(3)判例の状況
判決としては、免責許可決定後に過払金を回収しても、それは権利濫
用ではないという判決が東京高判平成一五年四月十四日(消費者法
ニュース六O号)、東京地判平成一五年五月二一日(消費者法ニュ
ース六一号)があります。
また第一小法廷最高裁平成一八年六月二二日(判例集未掲載)が
あります。これは上告不受理の決定ですが、SFCGの上告に対し
て最高裁も免責許可決定後の過払金請求は権利濫用ではないということ
で、不受理の決定をしました。
(4)今後の破産申立てに当たっての注意事項
破産の申立てに際して、気がついたならば少なくとも財産目録に
過払金債権がありそうだということは書いておく必要があります。
記載漏れがあると、資産隠しの疑いをかけられて、場合によっては
免責取消しの理由にもなります。
過払金債権の存在を薄々知っていながら、その存在を財産目録等
で明らかにせず、免責許可決定確定後、過払金の回収をするなどという
ことは、弁護士倫理に反し絶対に厳禁です。
現在は、裁判所から同時廃止事件で五年から七年以上サラ金業者
とつきあいがある場合、過払金の調査回収の指導がありますので、
今後の破産申立事件については免責許可決定後に過払金の請求をする事
態は生じないでしょう。ただし、前述したように、二O○四年ころ
以前の破産申立事案については、今後とも過払金の請求が増加する
ことが予想されます。
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