過払い金返還訴訟における争点−消滅時効の判例
過払い金返還請求における時効、消滅時効は、10年です。時効の進行の起算点から10年たつと、裁判での被告(サラ金業者)が時効を援用(時効だから支払いません)にて過払い金返還請求が無効となります。ではどこからこの時効はスタート(時効のスタートを起算点といいます)するのでしょう。最高裁での判例は出ていないので、この時効の起算点が現在の過払い金返還訴訟の最大の争点となっています。
以下に示す判例では、過払い金返還請求の消滅時効の起算点を、最初が取引が終了した時点とした大阪高裁の判例、次が借り手である原告が過払い金の存在を知った、つまり取引履歴開示請求を行い、法定利息での引直計算をした時点としています。
- 2008.04.15 大阪高等裁判所がアコムの控訴を棄却して、同社に過払金約670万円の支払いを命じた判例
過払金返還請求権の時効の起算点は,事実上一個の取引であると評価できる一連の取引が終了した時点、つまり取引終了時点とした。
- 2008.03.19 松山地方裁判所がプロミスに過払金約765万円の支払いを命じた判例
過払金返還請求権の時効の起算点は,過払い金返還請求権の行使が現実に期待できるようになった、つまり原告が原告訴訟代理人に債務整理を依頼した時点とした。
過払金返還請求権の消滅時効の起算点
「本件のような消費者金融において,一連の連続した貸付と弁済によって生じた過払金は,過払金が生じた都度,その時点において不当利得返還請求権が発生する。しかし,当該発生した過払金は,後の借入金債務に充当される可能性もあり,また,継続的に分割弁済が予定された契約において,借主は,少なくとも一連の取引が終了するまでは,各分割弁済を契約上の義務の履行として行う旨の認識のもとで弁済を継続していると考えられる(そうでないと,借主が分割弁済を継続することはありえない。)から,事実上一個であると評価できる一連の取引が終了する以前に,当該借主に不当利得返還請求権の権利行使を期待することは現実には困難であり,かつ,その権利行使をしないからといって,当該借主が必ずしも権利の上に眠れるものであるとは即断できない。そうであれば,当該借主が過払金返還請求権を行使できるのは,事実上一個の取引であると評価できる一連の取引が終了した時点であると解するのが最も実態に即したものと言わねばならない。」とし、「消滅時効に関する控訴人の主張はいずれも理由がない」としました。
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過払金返還請求権の消滅時効の起算点
- たしかに,債権の消滅時効の起算点については,弁済期が到来し,その
権利行使が可能となった時点から進行する。しかし,本件のように,継続
した金銭消費貸借取引において過払金が発生し,不当利得返還請求権を行
使する場合においては,権利行使が可能な時とは,単に権利の行使につき
法律上の障害がないというだけではなく,さらに,権利の性質上,その権
利行使が現実に期待できるようになった時点から進行すると解するのが相
当である(最高裁昭和45年7月15日大法廷判決民集24巻7号771
頁)。
- そこで,証拠(甲1の1及び2)及び弁論の全趣旨によると,次のとお
り,認定,判断できる。
- 本件においては,別紙1及び2のとおり,原告と被告は,昭和56年
2月5日,原告が50万円を借り入れて取引を始めて以来,途中,昭和
56年10月27日,3万500−0円,昭和57年1月25日,50万
円,同年12月1日,50万2000円,昭和59年3月22日,8万
円を借り入れた外,.原告が,ほぼ1か月位の間隔で弁済を繰り返してき
た。
- 原告は,最後の弁済をした平成19年7月5日の後である同年8月6
日の少し前ころ,原告訴訟代垣人に債務整理を相談し,同月6日,同代
理人により被告から取引履歴を取得した。
- 貸金業者が,債務者から取引履歴の開示を求められた場合,取引履歴
を開示すべき義務があるか否かについては,最高裁平成17年7月19
日第三小法廷判決(民集5−9巻6号1783貢)において,一般に,債
務者は,債務内容を正確に把握できない場合には,弁済計画を立てるこ
とが困難となったり,過払金があるのにその返還を請求できないばかり
か,更に弁済を余儀なくされるなど,大きな不利益を被る可能性がある
などとして,特段の事情のない限り,貸金業者は,金銭消費貸借契約の
付随義務として,信義則上,取引履歴を開示する義務を負う旨判示され
た。この判例が出るまでは,見解に争いもあり,貸金業者は,なかなか
取引履歴を開示しないということもあらた。しかし,同判示により,貸
金業者は,比較的当初からの取引履歴の開示にも応じるようになり,過
払金返還請求の可能性が拡大した。
上記認定,判断によると,本件の原告と被告との取引は,途中での中断
や終了があったとは認められず,ある程度長期にわたるものの一連一体の
取引と考えられること,前記第2,3(2)アの被告主張のように時効期間の
起算点を考えた場合,原告が権利行使できないまま権利が消滅すること.が
起こる可能性が高いこと.,本件のような一連一体の充当計算に基づく過払
金返還請求権の場合は,その権利行使可能な時期や可否は,原告の主観的
事情というより,上記ィ,ウで認定に係も客観的状況によることが大きか
ったこと,本件で過払金返還請求権.の行使が現実に期待できるようになっ
たのは,早くとも,原告が原告訴訟代理人に債務整理を依頼したことを自
認する平成17年8月6日であること等の諸点からすると,この時から時
効が進行するというべきであり,原告の主張は理由がある。
なお,被告の最終貸付の日が昭和59年3月22日であり,訴え提起時
よりも10年以上前になるけれども,.借主である原告の貸金業者への不当
利得返還請求権は,こうした原告と被告の継続的な関係が終了ないし中断
し,消費貸借関係の精算が開始された時点において始めて行使できるので,
上記判断を左右しない。
したがって,被告の消滅時効の主張は理由がない。
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